注目のコレクション

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  • 宮城県,船形山,ブナ 「日本の原生林」より
    水越 武
    1990年
    銀色素漂白方式印画


    木をめぐる作品を紹介します。深山に鎮座する大木は、神々しさがあり、人々に畏敬の念をいだかせます。木は神の依り代にもなります。樹木の花は可憐ですが、妖艶さをあわせ持ち、人の住む世界とは次元の異なる木の世界があるようです。人は木の生い茂る山の中で掟を作り、独自の作法をもって自然と接します。一方、里山の雑木林は、生活に欠かせない存在で、人と木のさまざまな交流の物語を紡ぎます。そして、木は穏やかに私たちを包みます。5つの元素のうちの唯一の有機体である木は、成長の象徴にもなります。土地に根付く木は、歴史の傍観者となり、ある時は地域のシンボルとして人々の心の拠り所にもなります。

    水越 武(1938-)
    愛知県生まれ。中学生の頃から登山を愛好する。大学中退後、写真家を志し、田淵行男に師事する。世界各地の高峰から日本の原生林、熱帯雨林まで地球の生態系を取材した写真作品に高い評価を得ている。91年に日本写真協会年度賞、99年に土門拳賞を受賞。2007年、東京都写真美術館にて「大地への想い 水越武写真展」を開催。

  • ハヤを焼く 昭和(戦後)
    清水武甲
    ゼラチン・シルバー・プリント


    火をめぐる作品を紹介します。火は地球生成の一つの要素です。地中から噴出するマグマは大地や山を形作りました。しかし、時としてそれらを切り裂き、人の暮らしを焼亡、破壊します。火は人がもっとも畏怖の念をいだいてきた元素です。一方、人々は火を使いこなすことにより、文明を作りました。火を囲んで暖をとり、調理をしました。また、宗教や信仰にも欠かせません。人力では及ばぬエネルギーを持つ火は、穢れを焼き尽くすとともに、浄火としても用いられてきました。消耗しつつある魂のエネルギーを再び奮い起こし、生の活力を蘇らせる火の勢いを彷彿させる祭りもあります。

    清水 武甲(1913-95)
    埼玉県生まれ。秩父で実家の「清水写真館」を継ぐ傍ら秩父の記録写真を撮り生涯のテーマとする。また、写真に限らず、秩父における文化活動の中心人物として、多角的な活動を生涯にわたり続けた。『秩父』で日本写真協会年度賞受賞。

  • 「遠野物語」より
    「遠野物語」より(佐々木喜善の墓より山口集落の生家をのぞむ)
    内藤正敏
    1972年
    ゼラチン・シルバー・プリント

    土をめぐる作品を紹介します。土からは作物の実りが生まれます。人が耕し、働きかけることで、豊穣をもたらします。水を制御し、人の生きる場所を形づくります。土地には人が織りなす固有の時間が積み重ねられ、地域の景観や文化をつくります。しかし、土と人、水、木の調和が崩れた時、人を寄せ付けず、時として人の暮らしを脅かす姿を現します。一方、生きとし生けるあらゆるものは土に還ります。生成・豊穣をもたらす土は終末の場所でもあるのです。土地は、聖なる場所、穢れの場所、異界との境界でもあります。

    内藤 正敏 (1938-)
    東京生まれ。早稲田大学理工学部卒業。大学在学中、写真部に属し、国立近代美術館「現代写真」展に出品。大学卒業後、企業の研究所に入社するが一年で退職。フリーランスの写真家として活動を始める。化学反応を表現した「SF写真展Z・A・Z」展でカメラ芸術新人賞を受賞。この頃より民俗学に関心を持ち、出羽湯殿山の即身仏に衝撃を受け、取材を始める。イタコや霊場など日本の信仰風習、都市の闇を撮影するとともに、民俗学の研究も行い、多くの論考を発表している。86年、『東京−都市の闇を幻視する』で日本写真協会年度賞を受賞。

  • 刀#1 平井松葉刀研師(東京都港区)「ジャパネスク」より
    奈良原一高
    1968年
    ゼラチン・シルバー・プリント


    金をめぐる作品を紹介します。硬質、堅固という属性を持つ金から、人は土を耕し、木を伐採し、獲物を捕らえる道具、争う武器を作りました。金は産業を生み出し、人の欲望を増大させます。金の支配が世界の支配でもありました。錬金術は科学であり、神の世界創世と同様の作業と見られていた時代もありました。刀鍛冶は伝説や説話の中で特別な存在として扱われる時があります。金属には有機物の暖かさはありませんが、均質で、幾何学的な美しさを備えています。

    奈良原 一高(1931-)
    福岡県生まれ。中央大学卒業後、早稲田大学大学院芸術専攻に進む。56年に桜島の集落と人工の炭鉱軍艦島をテーマとする「人間の土地」を発表し、写真界の注目を集める。59年、第2回ヴェネチア国際写真ビエンナーレで銅賞を受賞し、東松照明らとともに「VIVO」を結成。以降、パリやニューヨークを拠点に活動し、国際的な評価を得る。2004年、東京都写真美術館にて「奈良原一高 時空の鏡:シンクロニシティ」展を開催。

  • 孤舟 「瀬戸内海とその周辺」より
    緑川洋一
    1955年
    ゼラチン・シルバー・プリント


    水をめぐる作品を紹介します。水は地球上の生命の源です。土を潤し、木を育てます。海は多くの幸をもたらします。しかし、荒れる海、氾濫する川は人の暮らしを脅かし、命を奪います。古くから人々は幸をもたらしてくれるよう海や水の神に祈りを捧げてきました。透明な水は清らかさを表し、水の濁りは穢れを意味します。清らかな水に打たれることは身の浄めであり、流れ続ける水に浄化を願います。水に映る姿は、存在そのものではありません。陸が実在の世界とすれば、水の中には別の世界があるようです。

    緑川 洋一(1915-2001)
    岡山県生まれ。歯科業の傍ら在学中に覚えた写真に本格的に取り組む。石津良介の勧めで中国写真家集団に参加。戦後、植田正治らとともに「銀龍社」に参加。女性を被写体とした作品で二科賞などを受賞。その一方、故郷瀬戸内の風景をはじめ、世界各地の風景の撮影に取り組み、高い評価を得る。63年に日本写真協会年度賞を受賞。

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