注目のコレクション

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  • レモン・ニュース(フレッシュ)
    森千裕
    2009
    130×186cm  
    アクリル、フェルトペン、鉛筆/ケント紙、木製パネルにマウント

    森千裕(1978- )は、企業や商品、スポーツ・チームなどのマークや、映画の一場面など、都市に暮らす身体に溜まっていく種々の視覚的記憶のイメージを吐き出すように、無数のドローイングを描き、それらをコラージュのように再構成した絵画を描いてきました。高解像度で世界を見ていた幼い頃の落書きや、それらが持っている連想の遊びのような感覚も、彼女にとっては作品を作るための重要な道しるべとなっています。絵の具を吸収しやすい和紙を用いたり、ボンドを塗り重ねて半透明の画面を作ったりするなど、素材の実験を行いながらイメージと物理的に戯れる過程そのものが、彼女にとっては絵画を描く動機となっているようです。一方で、都市に氾濫するイメージが促す社会的な規範や、多数によって支持される「主流なもの」に対して、作家のまなざしのうちに、疎外感から来る異議申し立てが含まれていることも見逃してはならないでしょう。

  • ばら色の前方 後方
    辰野登恵子
    2011年
    油彩/カンヴァス
    248.5x333.3cm


    大きなサイズの画面に「ばら色」がひしめいています。「色をしっかりつけてあげないと心のなかの思いは伝わらない」と語るとおり、本作の「ばら色」は何層もの様々な色から出来ています。このような「ばら色」で描かれた丸みのあるものや角ばったもの、帯のようなものは、画面のなかで「前方」とも「後方」とも俄かに判別しがたい位置を占め存在しています。「もの」と周囲の空間がどのような関係を結んでいるか、それを色やかたちでどのように表すかという関心が、辰野独自の絵画空間を創出しているのです。辰野は、2011年の2月から3月にかけて、パリの版画工房IDEMに滞在し、石灰石の版を用いてリトグラフを手がけました。本作は、その帰国後に描かれたものです。

  • 黒い岩
    松本陽子
    1990年

    1936 東京に生まれる
    1960 東京芸術大学絵画科油画専攻卒業
       「第10回モダンアート協会展」(東京都美術館)大賞受賞
    1961 最初の個展(東京、サトウ画廊)
       東京在住

    澱み、渦巻く大気のように、画面は流動し止まるところを知らない。絵の前に立つと、細部よりも統一された全体が大きな矩形として現れ、観る者を包み込む。にわかには上下すら判別しがたいが、そのことによって生じる不安定さが平衡感覚を揺るがし、観る者を引きずり込むような力を画面に与えている。このような画面の質は作家固有の制作方法と無関係ではない。作者はカンヴァスを床に平らに置いて、その四方から薄く溶いた絵具を撒き、拭き取り、再び絵具やメディアムを擦り込んでいく。絵具は透明感が生かされ、その物質性は強調されない。ピンクの使用も相俟って画面はあくまでも軽やかである。とくにこの作品では筆のタッチを生かして白が置かれ、それが下地の白と入り交じり複雑な効果をみせている。松本陽子は、マティスやフランケンサーラーといった色面の広がりを重視する作品を咀嚼し、一貫して独自の抽象絵画を描き続けてきた。しかしその作風は中国南宋時代の水墨画家牧谿のような、充溢する湿潤な大気を描いた東洋絵画の系譜にも連なっている。

  • UNTITLED―石の花―
    笠原恵実子
    1991年
    タイル、大理石、ガラス、アルミニウム、セメント
    各155×63.3×63.3cm

    1963 東京に生まれる
    1986 最初の個展(東京,画廊パレルゴン II)
    1988 多摩美術大学大学院美術研究科終了
    1994-95 文化庁芸術家在外研究員としてニューヨークに滞在
    1995 「日本の現代美術1985‐1995」(東京都現代美術館)に出品
       ニューヨークに滞在

    丁度、目線のところに置かれた大理石の花はガラスのケースに覆われ、まるでしゃれた装身具店で宝石か装身具がディスプレーされているかのように見える。白く清潔なタイルの上に置かれた石の花は、何か華麗なもの、あるいはむかしからよく例えられてきたように女性と見なすことができる。しかし何故この花はガラスケースの中にしまわれなければならないのだろう、貴重品だからか。1994年の《Untitled-(in)different》で笠原は人間の胎児の段階で性器が女性と男性に分かれてゆくようすを子細に観察したものをそのまま美しい大理石の作品としている。未分化であった形態が時間をへるにつれて男性器と女性器にわかれていくさまをそれぞれ4個の形態で示したこの作品は対象にたいする厳密な観察と理解をかんじさせる。女性という自らの立場にこだわりながら作品を制作している笠原の作品は一見、優雅で美しいのだが、それを支えているのは彼女の鋭い思考と感性なのである。

  • 《Seed》
    加藤 美佳
    2006年 
    油彩/カンヴァス 
    106×120cm 


    《Seed》と題されたこの作品には、花びらの中から顔を出す子犬が描かれている。加藤美佳の制作方法は、モデルとなる人形を作家自身が制作した後に写真撮影し、それをもとに油彩画として丹念に描き込むというもので、1点ごとにきわめて長い時間をかけ制作される。この作品でも、花びらが痛んでいるようすまでもがリアルに描きこまれており、まるでおとぎ話の一節のような物語性とともに大切なものを慈しむような気配を感じさせる。それは、儚く不安定でありながらも、その無意識の内に大きな力を秘めた、少女という存在そのものを象徴するような絵画であるといえる。


    加藤 美佳 
      
    1975年 三重県生まれ
    1999年 愛知県立芸術大学美術学部美術科油画専攻卒業
    2000年 個展「カナリヤ」小山登美夫ギャラリー、東京
    2001年 同大学院修士課程を修了。五島記念文化賞美術新人賞を受賞。
        個展「クリテリオム48」水戸芸術館、茨城
        「My Reality ? Contemporary Art and the Culture of Japanese Animation」デモイン・アート・センター、マイアミ、ブルックリン美術館他全米を巡回
    2002年 「ぬり絵」カルティエ財団現代美術センター、パリ
    2003年 「絵画新世紀」広島市現代美術館、広島
    2004年 「六本木クロッシング」森美術館、東京
    2005年 個展、White Cube /Jay Jopling、ロンドン


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