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  • EIDOLON
    漆原英子
    1956年
    油彩/カンヴァス
    73x90.9cm

    1928 イギリス,ロンドンに生まれる
    1946 聖心女子学院語学部卒業
    1947 阿部展也に師事
    1952 最初の個展(東京,タケミヤ画廊)
    1981 「1950年代―その暗黒と光芒」展(東京都美術館)に出品
    2002 死去

    万華鏡のようなきらめきの中で、二つの眼をこちらに向ける怪物が大地の上で蠢いている。まるで太古からの長い年月を吸い込んだかのような皮膚は収斂し、その形態と輪郭を捉えどころのないものにしている。《EIDOLON》とは幻影、そして理想をも意味する英語。ロンドン生まれの英文学への造詣から選ばれたこの題名は、作家のヴィジョンをあらわしているかのようだ。
     漆原は、1950年代に美術批評家、瀧口修造が企画したタケミヤ画廊でデビューし、ここを舞台に活動を展開した。「既成画壇への依存を放下し」「個展発表を第一義とする作家」の活躍を希求した瀧口の活動が示すように、50年代とは美術団体や革新的なグループからは独立して制作発表することが可能となった時代であり、特定の流派に限定されることのないこの画面にも、その独自の態度があらわれている。

  • 抵抗
    桂ゆき
    1952年
    油彩/カンヴァス
    130x162cm

    1913 東京に生まれる
    1931 東京府立第五高等女学校卒業
    1935 最初の個展(東京,近代画廊)
    1956-61 欧米に滞在
    1966 「第7回現代日本美術展」最優秀賞受賞
    1991 個展(下関市立美術館)
    1991 東京にて死去

    幼少の頃より身近のオブジェに強い愛着を抱いていた桂は、コラージュ等の技法により「物と即結して即物的に」制作を行っていた。しかし戦争を契機に、社会状況と無関係に生み出される作品に疑問を感じ、これまで沈めていた物語性や思想性、人間性を押し出すことへと意識を転換させる。その結果、実際に物をコラージュしたもの、あるいはそれらを描いたものと戯画化・抽象化された人物像との組み合わせによる表現を試みるようになる。《抵抗》と題された本作品で、人物は生々しく赤い爪に長い髪を引っ張られており、その力から逃れようと鳥の脚にしがみついている。鳥はその手に抗うかのように首をもたげ、羽ばたこうとする。爪と人物、鳥と人物の間に力が拮抗し、強い運動感が画面に生じている。桂は、自分の感受性を素直に表現し、自分だけの世界を創造しようと作品を作りつづけてきた。が、その活動の根底に潜んでいたのは周囲の状況や固定観念に対する抵抗感であろう。ただ、桂自身そうした態度をとりながらも、自分を含めて人間に対し客観的に醒めた眼差しを向けている様が本作品におけるどこかユーモラスな人物の表情に窺えるようにも思えるのである。

  • ヴァシヴィエールの月
    土屋公雄
    1990年
    木(樫、杉、椋、他)
    150x400x4cm

    1955 福井県に生まれる
    1977 日本大学芸術学部建築デザイン科卒業
    1989 ロンドン,チェルシ・スクール・オヴ・アート彫刻科修士課程修了
    1990 個展「Eternity」(リモージュ,ヴァシヴィエール国立現代美術センター)
    1990 第3回朝倉文夫賞受賞
    1991 第14回現代日本彫刻展大賞受賞
    1994 個展「来歴」(斎藤記念川口現代美術館)
    1996 個展「虚構と記憶」(原美術館)
     千葉県在住

    「最初それは小さな金属音で始まった/突然 森の奥で恐怖にも似た叫び声が静寂を切った/数日後……すでにその森は消えていた」(『所在/LOCUS 土屋公雄彫刻作品集』1992年、p.9)。フランス、リモージュにほど近いヴァシヴィエール。1990年、同地の国立現代美術センターで開催される個展を機に土屋はヴァシヴィエールの森に入った。握りしめたのは、伐採の後に打ち捨てられた数個の木片。かつては大木であったろうその木片を一片また一片と並べ、死から生への輪舞を夜空に描く。欠けては満ちる月の円弧は、木片が土に還り、再び大木となって葉を広げる夢と重なり合う。80年代に伐採された自然木や工場廃材を、それらに息吹を与えるがごとく半円形や渦巻型の巨大なマッスに集積した土屋は、本作の後、廃屋を燃やした灰による作品へと向かう。巨大な構築物から物質の最後のそして最初の形である灰へ。それらは、生命の円環への長い祈りなのである。

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