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  • UNTITLED 90-14
    辰野登恵子
    1990年

    1950 長野県に生まれる
    1974 東京芸術大学大学院修士課程修了
    1980 「Art Today ’80 絵画の問題展」(西武美術館)に出品
    1984 「メタファーとシンボル」(東京国立近代美術館)に出品
    1994 「第22回サンパウロ・ビエンナーレ」に出品
    2014 死去

    深みのあるピンク色の地に緑色とローズ色の球体が浮ぶ。微妙な陰影を施された、大きさの異なる球体は、不均衡な構図のなかで反復し、有機的に連鎖していく。絵具は下に塗られた色をほのめかしながら幾重にも塗り重ねられ、深みのある色彩、材質感を実現している。こうした色彩や筆触、構図は本来二次元の平面であるこの作品に三次元的な空間の奥行き感(イリュージョン)を与えている。画面に浮かぶピンク色の地と球体のバランスはこの時期の辰野の特性であろう。1970年代にストライプや格子を基本としたミニマルな版画やドローイングを手掛けていた辰野は、1980年代以降油絵具の材質感を生かした絵画を制作しはじめた。そこでは常に有機的な線や矩形、球形などのイメージが立ち現れている。画家マティスを愛するという辰野は常に色彩豊かで、豊穣な質感を持つ作品を追求しており、今日の日本の絵画動向を代表する画家として高く評価されている。

  • 静かな向かい風
    舟越 桂
    1988年

    1951 岩手県盛岡に生まれる
    1977 東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了
    1982 最初の個展(東京,ギャラリー・オカベ)
    1988 「第43回ヴェネツィア・ビエンナーレ」に出品
    1989 「第20回サンパウロ・ビエンナーレ」に出品
    1992 「ドクメンタ9」に出品
       東京在住

    同じ人体像でも全身像と胸像では異なる性格を持っている。例えば古代ギリシアの全身像は身体造形に理想の均整を求めたのに対し、古代ローマで隆盛をみた胸像は顔だけで個人の性格や年齢を表現し、胴部はその台座としての役割を果たしている。
     舟越桂の木彫半身像《静かな向かい風》は、どこか遠くを見るような静謐で個性的な顔が台座としての胴部に乗るという点では胸像と類似性を持つ。しかし、腰から上という比較的大きな上半身が示す微かな傾きからは、一個の全身像としての重心の位置と均整を見てとることができる。この意味で舟越桂の半身像は、西欧伝統の胸像と全身像の双方を指向しつつ、両者間の微妙な位置に落ち着く作品と言えよう。一方、この作品にほどこされている玉眼は奈良県長岳寺阿弥陀三尊像(1151年)以来の伝統的彫刻技法である。著名な彫刻家舟越保武を父とし、父子共にカトリック信者である作者の最初の木彫作品は、函館のトラピスト修道院の《聖母子像》(1977年)であった。舟越桂の手になる半身像には、西欧彫刻と日本木彫の伝統が綾を成すように交錯しているのである。

  • トロント・プロジェクト1989
    トロント・プロジェクト1989/ コロニアル・ターヴァン・パーク
    川俣 正
    1991年

    1953 北海道に生まれる
    1978 最初のプロジェクト《BY LAND》(立川,多摩川河岸)
    1981 東京芸術大学大学院修了
    1982 「第40回ヴェネツィア・ビエンナーレ」に出品
    1987 「ドクメンタ8」《デストロイド・チャーチ》
    1992 「ドクメンタ9」《ピープルズ・ガーデン》
         パリ/東京在住

    木を用いたインスタレーションを都市空間に展開している川俣正は、インスタレーションは文字通り、その場限り、その時限りのものと言い切る。マケット、写真パネル、素描、作業写真、ビデオを合わせ見るならば、鑑賞者はプロジェクトの実現までの過程をたどる思いがする。しかし、作者はマケットをインスタレーションとは別の興味で成立しているものだと言う。確かに鳥瞰的な視点で作られたレリーフ状のマケットは正しい位置から見なければひどく歪んだ形になってしまう。それは、作業用のプランではなく、「見られる」ために制作されたものと納得させられるのである。トロント・プロジェクトは、都市の中の歴史的な含意をもつ廃墟的な空間に出現させた、インスタレーションである。廃墟とは時間と空間が出会うところ、と作者は語っている。そこへ架設的なプロジェクトを仕掛けて、別種の時間を持ち込むことによって、その場を異化し、新たな空間を発掘していくのである。

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