注目のコレクション

  東京都現代美術館

go江戸東京博物館   go東京都写真美術館   バックナンバー

  • ヘア・リボンの少女
    リキテンスタイン,ロイ
    1965年
    油彩,マグナ/カンヴァス
    121.9×121.9cm
    Copyright: Estate of Roy Lichtenstein, New York & SPDA, Tokyo, 2010


    1960年代初頭に漫画のひとコマを油絵に拡大して描いた作品を発表してポップ・アートの代表的な作家となったリキテンスタインは、1963年から65年にかけて本作品のように少女の顔をクローズアップした一連の作品を制作している。彼女たちは漫画やテレビドラマの典型的なヒロインであり、当時の一般大衆に期待されていた女性を演じ、虚構のロマンスの中で涙を流したり驚いたりしている。大画面に拡大されたその表情は、漫画やドラマの通俗的なプロットやステレオタイプ化した感情表現を強烈に提示する。画家の意図は、単に大衆的な図像を純粋芸術に高めて芸術のあり方を問うというものではなく、熟考された緊密な構成のうちに三原色のみを用いていかに明快で質の高い画面を作り上げるかという点にあった。長らく作者自身が愛蔵していた本作品は、時代の求めた可憐な少女のイメージが、作者のこうした造形的な追求と見事に調和した傑作といえよう。 (K.M.)


    リキテンスタイン,ロイ

    1923 アメリカ,ニューヨークに生まれる
    1949 オハイオ州立大学大学院修了
    1957−60 ニューヨーク州立大学助教授
    1960−64 ラトガーズ大学ダグラス・カレッジ助教授
    1962 最初の個展(ニューヨーク,レオ・キャステリ・ギャラリー)
    1967 回顧展(パサデナ美術館)
    1993−94 回顧展(グッゲンハイム美術館,ロサンジェルス現代美術館,モントリオール美術館)

  • 東方三賢王の礼拝(聖風景シリーズ)
    岡本信治郎
    1964年
    アクリル/カンヴァス
    111.5×161.3cm

    1933 東京に生まれる
    1952 都立日本橋高校卒業
    1964 「第一回長岡現代美術館賞展」大賞受賞
    1998 個展(神奈川県立近代美術館)
    神奈川県在住

    頭上を流れる星に導かれて、東方の三人の王は幼子イエスの誕生を祝福する旅へと向かう。よく知られた聖書の主題が、ここでは強い輪郭線と明快な色彩によって表されている。描きながらの変化を好まぬ作家にとって、描くべきものはあらかじめ決められ、均質な線で分割された面にはアクリル絵具による濁りのない色が順に置かれていく。平面的で単純なフォルムによって描きだされた人物はあたかも影法師のように連なっている。作家は本作品を含む《聖風景》と題された一連のシリーズを、人間存在の意味を根源的なところから問いなおすささやかな実験、と位置づけている。それは作家の抱く、自身をも含めた人間に対する強烈な不信感に裏付けられている。社会と人間との有機的な連帯意識が喪失してしまった現代では、もはや中世の宗教画にあるような天と地との対話から永遠を志向する精神の共同体を夢見ることはできず、それゆえにいかにも共同体があるように描いたとする本作品の三人の王からは、まばゆいほどの主題にもかかわらず陽気な欠如感が漂っている。

  • 思考するマルセル・デュシャン
    篠原有司男
    1965年
    油彩、コラージュ/カンヴァス
    160×120cm

    1932 東京に生まれる
    1953-57 東京芸術大学絵画科油画専攻で学ぶ
    1958 最初の個展(東京,村松画廊)
    1965 「第9回シェル美術賞展」3等賞受賞
    1969 ロックフェラー3世奨学金により渡米
    1992 回顧展(広島市現代美術館)
       ニューヨーク在住

    東京オリンピック開催の年、アメリカ現代美術の巨匠ラウシェンバーグが来日した。当時32歳の篠原有司男は公開質問会に駆けつけ、自作のハリボテ人形《マルセル・デュシャン像》を堂々と舞台に登場させた。その後、この人形はドブ川に流されてしまったというが、そのイメージは、「青写真」とも言うべき本作品が見事に伝えている。左手にはダダの元祖デュシャンの肖像、右手にはアメリカの消費文化の象徴ともいうべきコカ・コーラ。巨大な身体は全長約2メートルもあり、頭部はモーターで回転する仕掛けらしい。
     篠原は、既成の芸術に反旗を翻し常に新しい表現を追求した前衛グループ<ネオ・ダダイズム・オルガナイザーズ>の主要メンバーであり、頭をモヒカン刈りにしてマスコミに登場するといった奇抜な行動で世間を騒がせる新しいタイプの芸術家であった。この像は、変化し続けることを信条としていたデュシャンに対する篠原の熱きオマージュであると同時に、日本のヒーローから世界の巨匠ラウシェンバーグに対する挑戦状でもあったのである。

  • 無題
    小島信明
    1966年
    ラッカー/ポリエステル樹脂
    高173cm

    1935 福井県に生まれる
    1955 大阪市立工芸高等学校美術科卒業
    1958 「第10回読売アンデパンダン展」出品
    1964 最初の個展(東京、椿近代画廊)
       東京在住

    白いYシャツを着て、ブルーのズボンをはいた男が立っている。その男は、星条旗によく似た赤と白の縞模様の布を頭からかぶっている。赤、白、青の組み合わせは実に鮮やかで、遠くからも人目を引きつける。だが、そのような単純明快な見かけとは裏腹に、この作品では、たった一つの肝心なことがわれわれには隠されている。男の顔が見えないのだ。布の下で男がどのような顔をしているのか、何を考えているのかが分からない。そこから生まれるもどかしさ。そのことが、かえってわれわれの好奇心をかき立てる。作者は1962年の第14回読売アンデパンダン展で自分自身を出品作品の一部とするハプニングを行い、注目を集めたが、それは紅白の幕の前に置いたドラム缶の中で一日中窮屈な姿で立ち尽くすというものであった。それは人間が彫刻になることであったが、この作品では彫刻が人間となり、ハプニングを行っている。見かけは華やかな布におおわれた男はこう問いかけているようだ。表面的な刺激に興奮させられる現代社会の中で、われわれは実は何かに規制され、自由で豊かな「内面」や「個性」を喪失していないだろうかと。

  • Cの関係
    山口勝弘
    1965年
    アクリル、鉄、蛍光管
    180.0×137.7×34.5cm
    撮影:小椋安幸


    1928 東京に生まれる。
    1951 日本大学法学部卒業
    1952 「実験工房第3回発表会」(東京、タケミヤ画廊)に出品
    1968 「第24回ヴェネツィア・ビエンナーレ」に出品
       東京在住


    ここにあるのは赤い「C」と透明な「C」。二つともアクリル板で出来ているが、赤い「C」の内側には蛍光管が入っており、鮮やかに発光している。透明な「C」の内側には何もないが、アクリル板の表面に細い線が入っており、端正な印象を与える。ホットな「C」とクールな「C」。どちらの「C」にも共通してあるのが下の方に据え付けられたランプである。このランプはどちらも明滅を繰り返し、たがいに呼びかけ合う。両者は対照的な存在だが、雌型と雄型の関係を持ち、切り離して考えることはできない。しかも「C」は開かれた形であり、「O」のように閉じた形ではない。二つの「C」は、離れていても結ばれる可能性を持ち、空間をはさんでランプの明滅で言葉を交わしている。日本におけるライト・アートの最初の作品であり、光によってパフォーマンスをする彫刻という点にその特色と新しさがある。

ページTOPへ▲