注目のコレクション

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  • Notice - Forest: Madison Avenue
    照屋勇賢
    2011年
    紙袋、糊
    15x28x9cm、21.5x30x12cm、12x24x9cm、15.2x33x10cm、12x24x9cm、18x24.5x12cm(6点組)


    照屋勇賢(1973- )は、沖縄に生まれ、現在はニューヨークを拠点に活動しています。1995年は、彼にとっては個展を開催するなど、活動の最初期に当たる記憶に残る年だったと言います。身の回りの世界へのささやかな介入によって、社会の機構に対する批評的なまなざしと、卓越した造形性を併せ持つ作品を制作してきた照屋の代表的なシリーズの一つが、この〈告知−森〉と題された作品群です。世界中にあるハンバーガー店の袋の中をのぞくと、豊かな枝葉を持った一本の木がすっくと立っています。これは、作家が自らの生活圏で実際に出会った木をモデルにしていると言います。個人的な体験から出発し、紙はかつて木であったのだというシンプルな暗示を行うことから、グローバルな資本主義社会、都市と自然といった大きな問題系へと鑑賞者の意識を導いていく照屋の作品は、視点の転換によって世界を全く別の方向から眺めるための、ひとつの作法を示しているようです。

  • 川に着く前に橋を渡るな
    フランシス・アリス
    2008年
    映像インスタレーション、ドローイング15点、油彩1点、立体像1点
    サイズ可変


    1959年、ベルギーで生まれたフランシス・アリスは、建築と都市計画を修めたのち、86年にNGOに参加、派遣先のメキシコで都市の考察として観察や撮影、パフォーマンス等を重ね、89年にそれらを作品として発表。以降、自身の身体を媒介に都市と関わるアーティストとして活動している。「アクションによる介入」と呼ばれる彼の行為は、独自の仕方で都市の歴史や政治、文化的背景を考えるものとして、近年高い注目を集める。
    当作の舞台は、ヨーロッパとアフリカを隔てるジブラルタル海峡。天気の良い日には対岸が望めるこの海峡は、アフリカからヨーロッパへ密かに渡航を企てる人々を惹きつけてきた。アリスはこの地に「グローバル経済の促進を図りながら、同時に大陸をまたぐグローバルな人の流れを制限する」という「現代に潜む矛盾」を見て介入を企図する。それは、両岸から子供たちが列を作り、両大陸の間に想像の橋を架けるというもの。当作品はそのプロジェクトの記録である。
    彼のプロジェクトは、作家自ら「物語」と呼ぶように、細部と全体を欠き、時に結末や合理をもたず、十分な余白が多様な解釈を生んでゆく性質を持っている。当作でも、水平線の先での出会いの結末は明かされない。この一連の記録は、「矛盾」を端緒とした動機に相応しく、開かれた物語として常に想像によって補完されながら幾度も再生されるものといえよう。実社会や政治といった事実の領域に感性の領域を重ねながら関わるアリスの仕事は、物語というものの可能性をたずねつつ、思いがけない仕方で私たちの現実を浮き彫りにする。

  • Little Trouble Girl

    森千裕
    2010
    120×178cm  
    水彩紙、透明水彩、鉛筆、木製パネルにマウント

    懐中電灯を持ち、暗闇の中を何かを探す様子で歩く少女。周りに浮かぶのは、プロ野球チーム、自動車会社、幼いころの記憶にあるマークなど、都市に散りばめられた記号の数々である。この少女は、都市を徘徊しイメージに反応する画家の分身ともとれるだろう。紙に水彩を染み込ませる様式は、多彩なバリエーションをほこる森千裕の作品のなかで、ひとつの大きな系譜をなしている。日本画に多くを学んだというこの技法は、作家によると、「都市の湿った感じ」やそこに住む「人間の皮膚感」を表現するのに適しているという。  
    1978年生まれの森千裕は、都市生活に氾濫する記号、映画、マンガ、広告などのイメージ群、あるいは日用品や廃品を再構成し、自らを取り巻く環境をユニークな視点から変換する絵画や立体作品で、早くから注目を集めてきた。自らが育ってきた「昭和のイメージ」に興味があるというその作品は、共同体の記憶を喚起するとともに、その奥に潜む神仏や民話などの土着的な欲動に言及する広がりを持っている。

    森千裕

    1978 大阪府生まれ
    2005 京都市立芸術大学大学院修士課程美術研究科絵画専攻修了
    2007 「夏への扉-マイクロポップの時代」 水戸芸術館(茨城)
    2010 「絵画の庭─ゼロ年代日本の地平から」 国立国際美術館(大阪)
    2011 「Attempt 3」カスヤの森現代美術館(神奈川)
      「VOCA展2011」(東京)
      「中之島コレクションズ」 国立国際美術館
    2012 個展「ピンク色の闇」 無人島プロダクション(東京)
      個展「カラフルなヌカルミ」 CAPSULE(東京)

  • 泥絵・地中の海
    淺井裕介
    2011年
    土、粘土/木製パネル
    220x300cm


    淺井裕介(1981- )は、土や埃や葉っぱ、身の回りのあらゆるものを素材として取り込みながら、絶えず手を動かし、動物や植物などの生命感あふれるモチーフで、自分の環境を埋め尽くすかのように描き続けてきました。土と水を使った泥絵は、以前は壁に直接描かれ、後に水で洗い流されてしまうことで、「作品」という行為の結果ではなく、空間と対話しつつ「描く」というプロセスへと鑑賞者の注意を促していました。本展出品作は、2011年に当館で公開制作されたうちの1点で、恒久的に残し美術館で収蔵するという条件に合わせて、パネルに描くという、彼にとっては新たな挑戦となったものです。しかし、「描く場所と見せる場所が同じ」という、淺井が考える「ものを見せるための重要な条件」は、美術館の中で時間を超えて守られていくことになるはずです。

  • 録画した瞬間、それは覗きになった
    竹内公太
    2011年
    シングル・チャンネル・ビデオ


    《録画した瞬間、それは覗きになった》は、「指差し作業員」との関連が推察されている竹内公太(1982-)が、2011年3月12日から14日にかけてコンピュータを使って震災についての情報を収集する様子を自ら録画した映像です。
    竹内は録画ボタンを押した瞬間から、災害時にあるべき正しいふるまいを強制され、被災地域の様子を覗いているようで、同時に誰かに覗かれるような、奇妙な緊張感を感じたといいます。それはこの映像を見る私たち、記録を振り返る未来の人々、あるいは「指差し作業員」からの視線かもしれません。

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