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  • without records - mot ver. 2015
    大友良英+青山泰知+伊藤隆之
    2005/2015年
    ポータブルレコードプレイヤー、スタンド、コンピューター
    サイズ可変

    大友良英+青山泰知+伊藤隆之によるインスタレーション《without records - mot ver. 2015》は、タイトルが物語るようにレコードは存在せず、プレーヤーそのものが発する個性豊かな音が音源となっています。コンピューターによってオン・オフがコントロールされた個々のプレーヤーには、展示に先立って実施されたワークショップにおいて、それぞれ金属やプラスチック、ゴムなどの素材を用いて様々な加工が施され、そこから発せられる多層的な共鳴音が、森のような展示空間を満たしています。
    大友良英(1959-)は、演奏家、作曲家として80年代よりアンダーグラウンドな音楽シーンで活躍を続けるとともに、近年は映画やドラマ音楽の分野でも才能を発揮しています。個々のプレーヤーによって生み出される音が主役の本作品は、再生される毎に組み合わせが変化し、二度と同じ「曲」が再現されることはありません。まさに、大友が共作者である青山泰知(美術家)、伊藤隆之(プログラマー)とともに、「ノイズ/即興/アンサンブル」をコンセプトに創り上げた、「今現在の音楽」と言えるでしょう。
    《without records》は、これまでにも各地で展示が行われてきましたが、本作は、当館のコレクションのために新たに制作されたものです。

  • ばら色の前方 後方
    辰野登恵子
    2011年
    油彩/カンヴァス
    248.5x333.3cm


    当館が開館した1995年、最初の企画展「日本の現代美術 1985-1995」で、辰野登恵子(1950-2014)の作品が展示しました。その後も常設展示で紹介しつつ、2008年には、作家のアトリエでのインタビューをもとにDVD「アーティストに聞いてみよう!」を作成し、子供向けの鑑賞用教材として現在も活用しています。こうした作家と当館との関わりのなかで、昨年ご遺族から多数の作品をご寄贈いただきました。版画作品は、2011年2月から3月にかけてパリの版画工房IDEMに滞在し、現在では希少となった石灰石の版を用いて刷られたリトグラフで、制作順に番号が付けられています。これらは、帰国後に描かれた《ばら色の前方 後方》とともに発表されました。「色をしっかりつけてあげないと心のなかの思いは伝わらない」と語るとおり、作品の「ばら色」は何層もの様々な色から出来ています。また、「ばら色」で描かれた丸みのあるものや角ばったもの、帯のようなものは、画面のなかで「前方」とも「後方」とも俄かに判別しがたい位置を占め存在しています。このように、「もの」と周囲の空間がどのような関係を結んでいるか、それを色やかたちでどのように表すかという関心が、独自の絵画空間を創り出しているといえます。
    さらに、版画と油彩画では、モチーフや構図がどこか似通っていても、その表現方法の違いによって異なる表情を見せており、描かれるものと技法の組み合わせから生まれる豊かさが辰野の作品の大きな魅力になっています。

  • 定規
    豊嶋康子
    Ruler
    1996-1999/2015
    プラスティック定規
    サイズ可変

    豊嶋康子(1967-)は、1990年の個展以来、学校や家庭など社会の規準や価値、行動様式といった、私たちに内面化されている様々な制度と自身との関わりを可視化する作品を手がけてきました。その手法は、私たちの日常的な行為の延長線上にあり、実際に使用されている事物や仕組みへの「介入」と呼べるものです。
    身近な日常品の意味作用や機能に介入をはかる初期の代表作《定規》では、共有された基準=定規に熱を与え、目盛を無効化することで、個々の素材に沿った個体差を生じさせます。《振込み》は、「銀行に「私」空間として口座をひらく」《口座開設》に連なる作品で、自身の口座にATMから振込みをする行為を可視化する試みです。銀行という枠組みを利用し、あるひとつのシステムに、自身を過剰に組み込むことで、記号化の進んだ社会において、自己の成り行きを示すことが目指されました。見えない裏面に過剰な細工が施された、近年の〈パネル〉シリーズは、「絵画」そして「美術館」という制度や条件に対する批評に満ちています。
    豊嶋の制作は、いたるところシステム化と管理が進む現代社会において「私を形づくるものは何か」という問いを一貫して発するものです。作品の現れは多様ですが、すべてに共通する、自身をもってシステムに入り込んでそれを掴もうとする手法は、私たちに、自らの意志、そして自由について“自分で”考えるよう、あらためて促しているように思えます。

  • Notice - Forest: Madison Avenue
    照屋勇賢
    2011年
    紙袋、糊
    15x28x9cm、21.5x30x12cm、12x24x9cm、15.2x33x10cm、12x24x9cm、18x24.5x12cm(6点組)


    照屋勇賢(1973- )は、沖縄に生まれ、現在はニューヨークを拠点に活動しています。1995年は、彼にとっては個展を開催するなど、活動の最初期に当たる記憶に残る年だったと言います。身の回りの世界へのささやかな介入によって、社会の機構に対する批評的なまなざしと、卓越した造形性を併せ持つ作品を制作してきた照屋の代表的なシリーズの一つが、この〈告知−森〉と題された作品群です。世界中にあるハンバーガー店の袋の中をのぞくと、豊かな枝葉を持った一本の木がすっくと立っています。これは、作家が自らの生活圏で実際に出会った木をモデルにしていると言います。個人的な体験から出発し、紙はかつて木であったのだというシンプルな暗示を行うことから、グローバルな資本主義社会、都市と自然といった大きな問題系へと鑑賞者の意識を導いていく照屋の作品は、視点の転換によって世界を全く別の方向から眺めるための、ひとつの作法を示しているようです。

  • ロッキング・マンモス,M・ザ・ナイト
    ヤノベケンジ
     
    ≪ロッキング・マンモス≫
    2005年
    鉄,機械部品,他 
    370×190×450cm 

    ≪M・ザ・ナイト≫
    2006年
    ガスマスク,鉄,真鍮,他 
    h.240cm



    1965年生まれのヤノベケンジは、日本が高度経済成長期にあった時代に育ち、漫画、テレビアニメ、SF映画に囲まれて世界観を築いてきた。彼の作品にはこうした少年時代のサブカルチャー体験が、色濃く反映されている。初期に発表された巨大プラモデルのような彫刻作品には、鑑賞者が装着できたり、乗って動かせるユニークな機能が付いていたが、それはまた未来の地球で生き残るための装置「サヴァイヴァル・マシーン」でもあった。そうしたヤノベの意識に変化が訪れるのは日本を離れて、チェルノブイリを訪れた1997年である。ヤノベは自作の放射能防御服《アトム・スーツ》を身につけ汚染地帯に乗り込んだが、廃墟と化したチェルノブイリで再び生活を始めた住民の姿を発見することになる。それ以来、ヤノベの創作テーマは、自分だけが生き延びる「サヴァイヴァル」から、他者とともに再び生き直すことを目指す「リヴァイヴァル」へとシフトし、生に対するポジティブな要素が加味されるようになった。2004年には愛知万博のために「マンモス・プロジェクト」を立ち上げ、工業廃材で作ったマンモスをシベリアに埋めて未来に掘り起こす壮大な計画を提案した。このプロジェクトは万博では実現を見なかったが、その後、若い世代の賛同を得て引き継がれ、その過程で作られたのが《ロッキング・マンモス》である。車を解体して作られたこのマンモスは、ユーモラスな形をしているが、排気ガスで環境を汚し、進退きわまる20世紀の象徴でもある。このように既成のアートの枠組みを超えるヤノベの活動は、現実に対するわれわれの覚醒を絶えず促し、時代や社会に対する鋭い批評となっている。


    ヤノベケンジ
    1965 大阪生まれ
    1991 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
    1994−97 ベルリン在住
    1997 チェルノブイリを訪ねる
    2003 個展(国立国際美術館、大阪)
    2005 個展(豊田市美術館、愛知)
    2006 個展(霧島アートの森、鹿児島)
    2009 個展(豊田市美術館、愛知)
       大阪在住

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